新型コロナウィルス(2019-nCoV)と、インフルエンザ、どちらが脅威?という内容をよく目にしたのですが、納得いかなかったので調べてみました。
きっかけ
2020年2月14日午前8時53分、読売新聞が発表したニュースです。
読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/national/20200214-OYT1T50068/
専門家「過度に怖がる必要ない」…死に至るケース少なく、82%が軽症
この見出しだけで、インパクトが大きいですよね。本当か?と思ってしまいます。さらに見てみると、上記の記事には、以下のように記載されていました。
世界保健機関(WHO)によると、約17,000人の感染者を分析したところ、82%が軽症、15%が重症、3%が重篤
逆に考えると、新型コロナウィルス罹患の18%は中等度以上であるということになります。
読売新聞が「過度に怖がる必要ない」との報道への違和感に納得がいかず、自分で調べてみることにしました。
前提
前提として、軽症や重症といった言葉は救命搬送の重症度を表すものとして、厚生労働省(緊急度判断基準作成委員会)が定義しています。
救急搬送における重症度
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/08/dl/s0825-6c_0001.pdf
その中では、以下のように定義されています。
- 軽症:入院を要しないもの
- 中等症:生命の危険はないが入院を要するもの
- 重症:生命の危険の可能性があるもの 生命の危険の可能性があるものとは、重症度・緊急度判断基準において、重症以上と判断されたもののうち、死亡及び重篤を除いたものをいう。
- 重篤:生命の危険が切迫しているもの 生命の危険が切迫しているものとは、以下のものをいう。
① 心・呼吸の停止または停止のおそれがあるもの。
② 心肺蘇生を行ったもの。 - 死亡:初診時死亡が確認されたもの
発生期
感染症についての時間軸が厚生労働省により定義されています。
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/14/backdata/2-7-1-03.html
上記で、以下のように定義されています。
- 未発生期
- 海外発生期
- 国内発生早期
- 国内感染期
- 小康期
アナウンスはまだされていませんが、この記事を記載している2020年2月15日現在においては、国内感染期に入っている、として以下記事を記載します。
上記の定義に沿って、具体的な数字を調べてみることにしました。
新型コロナウィルス
厚生労働省発表データ
2020年2月11日発表
最新版では、以下の通り発表されています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09418.html
概要は以下です。
罹患数・死亡数・回復数
罹患数:40,457件
死亡数:910件(2.249%)
回復数: –
残念ながら、回復や退院に関するデータ数がありませんので、現状起きている実態としてしか把握できません。そのため、以下のデータを用いることにしました。
ジョンズ・ホプキンス大学による可視化データ
ジョンズ・ホプキンス大学により、可視化されている新型コロナウィルス罹患数・死亡数・回復数です。
https://gisanddata.maps.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html#/bda7594740fd40299423467b48e9ecf6
本記事作成における、2020年2月15日11時45分現在最新情報を記載します。
罹患数・死亡数・回復数
罹患数:67,079件
死亡数:1,525件(2.273%)
回復数:8,156件(12.159%)
観察結果
データを並べて見た結果、以下のことがわかります。
- 両データとも死亡率は現状2.2%付近の誤差内に収まっている
- 回復率は現状12.159%であるが、国内感染期であるためデータは不完全
未曾有の事態であるがゆえ、不安が募ります。今年大流行していると言われる、インフルエンザと比較してみることにしました。
インフルエンザ
日本とアメリカでのデータを用いることにしてみます。日本とアメリカの大きな違いとして、皆保険の有無や所得の格差分布が影響することが予想されますが、データをまずは取得してみます。
日本
厚生労働省がインフルエンザ定点サーベイランスを基に公表してるデータを基にします。その前に、インフルエンザ定点サーベイランスとは・・・。
インフルエンザ定点サーベイランス概要
感染症法に基づき、1999年9月より開始され、全国約5,000か所のインフルエンザ定点医療機関(小児科約3,000、内科約2,000)が、週ごとに、インフルエンザと診断した症例の年齢群及び性別で集計した集計表を地方自治体に報告していいます。
厚生労働省発表データ
https://www.mhlw.go.jp/content/000595559.pdf
2019年第36週(2019年9月2日~2019年9月8日)にインフルエンザの発生が確認され、最新版では2020年第6週(2020年2月3日〜2020年2月9日まで)分までのインフルエンザの発生状況が公表されています。
一方、上記のレポートには死亡数が入っていません。
国立感染症研究所によるインフルエンザ関連死亡迅速把握システムが21大都市(政令指定都市 27,497,224人 + 東京9,272,740人)のみで観測している死亡数の数値を有しています。
国立感染症研究所によるインフルエンザ関連死亡迅速把握システム
https://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-m/2112-idsc/jinsoku/131-flu-jinsoku.html
2015年(平成27年)国勢調査によると日本の人口は127,094,745人で、21大都市はそのうち28.9%を占めています。従って、概算として2,750人の死亡数を28%として計算すると、全国規模とすると9,515人程度が期待されます。
上述のデータから罹患数・入院数・回復数を計算します。
罹患数・入院数・死亡数
罹患数:6,489,000人
入院数:12,072人(0.186%)
死亡数:9,515人(0.147%)
アメリカ
一方アメリカはどうでしょうか。
CDCデータ
CDC(Centers for Disease Control and Prevention)の発表から計算しました。
CDC(Centers for Disease Control and Prevention)では、インフルエンザ患者の罹患数・入院数・死亡数の予測を行っています。
この予測は、アメリカ合衆国内で人口ベースの調査をしているInfluenza Hospitalization Surveillance Network (FluSurv-NET)が有している、アメリカ合衆国総人口の9%へ医療を提供している施設からの情報を基に算出しています。
https://www.cdc.gov/flu/about/burden/index.html
また上記のデータは、統計学における信頼区間(Confidence Interval)ではなく、不確定区間(Uncertainty Intervals)で表示されています。
罹患数・入院数・死亡数
罹患数:35,520,883人
入院数:490,561人(0.149%)
死亡数:34,157人(0.096%)
観察結果
データを並べて見た結果、以下のことがわかりました。
- 両国データでの入院率、死亡率は共に誤差内に収まっている
- 入院率はアメリカの方が高く、死亡率は日本の方が高い
- 日本とアメリカの比較における皆保険の有無や所得の格差分布の影響は、データ上は出現しない
- 回復率を罹患率から死亡率を差し引いた数字とすると、両国共に回復率は99%以上となる
新型コロナウィルス vs インフルエンザ
ここまでのデータを比較したり、調査したりすると、以下のことがわかります。
- 新型コロナウィルスの回復率が現状12.159%、インフルエンザの回復率は99%以上という数値上の大差がある
- 新型コロナウィルスは、国内のみならず世界的に感染期であるため、データが不完全である
- WHOを含めた報道からの内容では数値的根拠が示されず、公表されているデータとの比較だけでも乖離が大きいため、疑心暗鬼を助長する
さいごに
個人的にはモヤモヤしていたことを調査し、今回の記事に出来たことでモヤモヤは少し晴れました。しかしながら、新型コロナウィルスの感染防止策、治療法の未確立、伝染の早さはこの世界、特に日本に暗い影を落としています。一刻も早く、事態が改善することを待つしか出来ないのを歯がゆく思います。
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